術前の喫煙・飲酒 〜禁煙は長期間なのに、禁酒は前日でよいのか?〜
外科系では必ずといっていいほど確認する、術前の喫煙・飲酒。
禁煙 は手術が決まったらすぐ、もしくは1ヶ月前 に開始 (ニコチンによる交感神経亢進作用による狭心症や創傷治癒遅延効果、タールによる肺機能障害etc.)
禁酒 は手術前日(アルコール離脱症状が起こるような常用者や、肝機能低下例ではより長期)
と伝えている機関が多いかと思います。
今回は飲酒について。
体にアルコールが残っていれば、血管拡張作用などにより血行動態に影響を及ぼすため、術中のリスクは上がりますので、前日には少なくとも止めなくてはいけないというのは、感覚的にも納得の行く話かと思います。
でも、喫煙と同じ様に、長期的に中止する必要は無いのでしょうか?
飲酒習慣と術後合併症の関係はどうなっているのでしょうか?
飲酒について、2014年 大手雑誌からシステマティックレビューが出ました。
外科系の雑誌ではトップのインパクトファクター(8点位)を誇る、米国外科学会の公式雑誌"Annals of surgery (Ann surg)"から。
(お金がかかるからAbstractしか読めてませんが今度図書館ででも探してみよう...)
術前の飲酒と術後合併症の関連性についてのシステマティック・レビュー "Preoperative alcohol consumption and postoperative complications: a systematic review and meta-analysis."(デンマーク:Eliasen M ら)
・少量の飲酒は合併症とあまり関係なさそう。(そもそもこれについては評価するためのデータは少なかったから十分な信憑性があるとは言えないかも)
・多量の飲酒は死亡率が上がる。(RR = 2.68; 95% CI: 1.50-4.78)
・死亡率 general morbidity (RR = 1.56; 95% CI: 1.31-1.87), 感染率 general infections (RR = 1.73; 95% CI: 1.32-2.28), 創部合併症 wound complications (RR = 1.23; 95% CI: 1.09-1.40), 肺合併症pulmonary complications (RR = 1.80; 95% CI: 1.30-2.49), 入院の長期化 prolonged stay at the hospital (RR = 1.24; 95% CI: 1.18-1.31), ICU入室率admission to intensive care unit (RR = 1.29; 95% CI: 1.03-1.61).
信憑性は十分とは言えないかもしれないけど、機械飲酒なら前日の禁酒で十分ということなのでしょうね。